Site:
Program:
Site Area:
Building Area:
Floor Area:
Completed:
Architects:
Co.Architects:
Structural Eng.:
Constructor:
Photo:
Nagano
a weekend house
1027.71㎡
116.76㎡
145.86㎡
July.2017
Chika Kijima
Naoki Hirai
正木構造設計事務所
第一建設株式会社
上田宏建築写真事務所
Description
子育てを終えたご夫婦が避暑休暇あるいはウィンタースポーツなど楽しむために購入された土地は、軽井沢の別荘地の一角で、北側の浅間山に向かって南北の対角50m弱で約3mと緩い勾配の傾斜地でしたが、元々1000 坪あったものが3区画に分譲される際、建設しやすさへの配慮か、起伏が均され、樹木が間引かれ、雑木林はその厚みや表情を淡く漂白・均質化されてしまっていました。
木々に囲まれた環境に惹かれて時を過ごす場を整えるにあたり、山の稜線など分かりやすい眺望対象はなくとも、既存樹を最大限残し、建築をはじめとする人為的行為が(破壊や負荷になるだけでなく)自然環境のささやかな差異を掬い上げたり、南・北・西の方位ごとの特性を呼び起こしながら増幅させる装置となって、季節や時間の移ろいを感知するきっかけをもたらすようにしたいと考えました。
別荘地の建築は一方で個々に異なる世界観を主張しそれぞれに自己完結しがちで、それらが木立の合間にひしめき合う様がせっかくの雑木林の豊かさ拡がりをぶつ切りに分断しているようにも感じられました。
木々の合間に完結しないイメージが散漫に分散、木立に紛れるような在り方や、見る位置によって異なる面相を持ち全体像を把握するのに時間を要する佇まいを纏うことが、殊に樹々の奥行きが浅くなりがちな場所での建ち方として有効に思われました。
片流れ屋根は、棟側と軒側の高さの違いが大きく、妻面とケラバ面でも水平と傾斜という違いを持ち、シンプルながら面ごとの違いや向うとこちらの印象を変えやすい形式です。
このプロジェクトではL型の出隅と入隅を持つ平面形状の片流れ屋根を敷地の対角、傾斜の中間に配することで、ごく緩い勾配の地面の高低差や南北の庭の違いをより顕在化させようとしています。
避暑だけでなく通年利用を想定するにあたり、寒冷地では屋外との断熱ラインがひと際強固な内外の結界となりがちですが、断熱ラインを一重にするのではなく、深い軒下テラスや大屋根下の入れ子状の主寝室やトイレなど内外に複数のレイヤーや緩衝帯を用意することで屋外との接点や距離感を単一化せず、外部環境を意識から遠ざけないように留意しました。
比較的水捌けがよく湿気対策が軽微に済むことから高床とはせず、地面と目線との近さも楽しみの一要素としています。
屋根に採用したダブルシールドパネルは、断熱性能や工期短縮のみならず工場と現場加工の連携により深い軒の出ながら薄くシャープな形状の形成や片流れ屋根のリスクとなりやすい結露や漏水防止に大きく寄与しています。葉の重なりのような質感が窓越しの木漏れ日と呼応することから室内ではOSB面を表しのままとしました。
南側は、落葉樹に夏季の日除け役を担わせながら室内からも高窓越しに木立の高さを近くに堪能できるよう、軒は出幅も厚みも最小限としました。南側の庭に出て建屋を振り返ると、屋根越しの木々の梢と、アイレベルでの室内越しの緑だけでなく、片流れの屋根の効果でマジックミラー状態となる高窓に背面の木々が映りこみ、3種の距離感の木々が同時に視野に収まる様は雑木林が倍増しているかの錯覚を引き起こし、屋根は存在感を消し、空と緑と樹木の影が主体となります。
他の面がすべて矩形を基本とする中で、北西面はカーポート用の屋根を必要最小面積に留めることも兼ね、ケラバを斜めにカット。ひとつながりの屋根でありながら方位によって異なる面相を獲得し、木立の中にイメージを分散させる一助となったように考えています。
©2021 Chika Kijima