Site:
Program:
Site Area:
Building Area:
Floor Area:
Completed:
Architects:
Asst.Architects:
Structural Eng.:
Constructor:
Photo:
Chiba
a house
247.47㎡
90.02㎡
104.74㎡
Apr. 2012
Chika Kijima
Junko Uehara
正木構造研究所
榊住建
上田宏建築写真事務所
Award
関東甲信越建築士会ブロック会 優良建築物 2014年6月
東京建築士会 2014年住宅建築賞
建築学会 作品選集2014
LIXILデザインコンテスト2012 銀賞
Publication
『新建築住宅特集』2012年11月号
Description
音楽家夫婦のためのSOHO的な住宅です。
街道や小学校に近いごく一般的な住宅地で、演奏練習や睡眠時刻などが周辺の生活ペースとズレがちな生活スタイルを送るため、スタジオから近隣の住宅に音を漏らさないこと、寝室に外部からの音を入れないことが求められました。また、本番や締切を個々のスケジュールで迎える二人の音楽家にとって互いのペースを尊重しつつ共に過ごすことの居心地良さを両立させることが重視されました。つまり近隣との距離感、家族との距離感の調整役として建築にできることがテーマでした。
寝室を中心に収納や日常生活の場を円環状に重ねる平面構成とし、スタジオと寝室はそれぞれ異なる手法で遮音性能を確保しつつ、遮音を必要としない時は防音扉を開放することで、家の中に回遊動線が発生し、風の吹きぬけるルートが生じる・・・遮音とは別の空間装置としての働きを重ねることで、防音エリアが日常生活エリアとコネクトされやすいようにしました。
また、自分のテリトリーを把握するきっかけとして補助線的な建築要素を完結させずにずらしながら重ねていくこと、特に南側に帯状に連なる日常生活エリアは平面としての多角形状や天井高さの変化、素材や色の組合せを重ねることで、その時々の互いの心理的な距離感に応じて居場所を選ぶことのできる小さな完結しない空間が連ねられています。
限られた面積空間の中で少しずつ折れ曲がり見え隠れする廊下状の空間がバッファーとなりつつ、隔てるだけでなく時に互いの存在を柔らかく近づけるような建築を目指しました。
多角形状の建物の周囲に分散発生する庭は、近隣建屋との心理的な距離感を担保するだけでなく、互いの陽当りの確保や、透水性の舗装と植栽によって気化冷却性能を保持することで室内とともに近隣へも涼風をもたらしていると思われます。
また、西側に配した防音性能を必要とされるスタジオは、自ずと高気密高断熱性能を併せ持つため、他のエリアに対し西日からのバッファーゾーンとしても機能しています。
設計スタート時、周囲に対して窓は一切ない方が気が楽、とまで言われていたのですが、竣工後は地窓や高窓から猫の行き来や空の移ろいを眺めることを楽しんでいただけているようで、また北面以外に設けた庇の出が外壁面への日差しの負荷軽減させるだけでなく、軒裏で室内の明かりを反射増幅させることでプライバシーを確保しつつも限定された開口部から来る閉鎖的なイメージを和らげたり、正面の全面FIXのプロフィリットガラスも閉じつつも道行く人に灯りをもたらすなど、周囲と緩やかに関係を保つ建ち方ができたのではないかと考えます。
©2021 Chika Kijima