敷地内に一番古くは戦前から約20年おきごとに増築された建屋が合計3棟あり、全体をまとめて新しく一棟に改築するにはやや予算オーバーだったことと、建て替え中も演奏練習する防音室の確保が必要だったことから、2棟を解体する前にまずは1棟を改修し先行して防音室を確保することになりました。

昭和50年代に建てられた既存家屋は1階と2階の間取りがずれて通し柱が少なく、基礎の強度や形状も不明だったため、もともと和室だった主室の床を解体し、掘り下げ、基礎土間回りを補強しつつ、音楽スタジオとして天井高さを確保しました。防音室を囲む壁や2階の床をいったん補強した上で、内装は床壁天井共に躯体とは防振ゴムを介して接続するようにし、木造ながら一定の遮音性能を確保しています。給排気はいったん隣接するパントリーをチャンバー扱いとすることで音漏れ対策としています。

楽器の搬出入用にエントランスは新たに増築し、新築棟とそろいの新しい外装素材とする一方、既存の障子建具を天井の照明カバーに転用再利用するなどもしました。

スタジオ内の柔らかなムラを持つグレーの塗装は、建て主が質感にこだわって選定したPoter’sPaintsのFRENCHWASHというシリーズで、建て主と設計事務所とでDIY塗装を行いました。